トゥデイ>皇帝、福引きリターンマッチの巻


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 諸君、あけましておめでとう。新年とあらば、昨年の敗北を改めて確認し、今年こそはあんな失敗はせぬっ、という強固な意志を形成するのが勝負師では無かろうか。そういう訳で、皇帝の去年を振り返ってみようではないか。


 昨年は、新小岩みのり商店街にはずいぶんと苦戦した覚えがある。夏には青いトマトで騙され、これはその後熟したトマトを選ぶ事により雪辱を果たしたものの、肉屋ではおまけについたマズいポテトサラダを喰わされた。

 盆の時期には一斉に休んで余の食生活をいたく圧迫してくれたし、カビの生えたミカンを入れておくなど味なまねもしてくれた。

 なによりも屈辱だったのは、2000円を投じて得た福引きの権利を、たったの10円で退けた事であった。このとき余は、馴染みの総菜屋で「また冬にやるからがんばりな」と聞きつけ、以来半年に渡って気合いを練ってきたのだった。


 まず、一回というのは厳しい。確かに真の勝負は一回きりではある。しかし総菜屋の親父が規定より多くの福引き券をくれるものだから、意に反して三回分もたまってしまったのだ。あるものは使わねば損であろう。勝負師たるもの、勝利の為にはプライドをいささか引っ込める事も重要である。

 さて、福引きとはやはり師走に行うものだろう、と日本の伝統にのっとり日を選んで出かけると、いるわいるわ。さすが日本人である。伝統を大切にするその心がけや良し。今日は文句を言わずに並んでやろう。

 並ぶこと15分、寒空の下、人々は目を輝かせながら順番を待っている。この忍耐強さ、見習うべきかもしれぬ‥などと考えている内に、やっと番が回ってきた。さっと賞品一覧に目を通す。トップは現金1万円。ご招待とかその他変な賞品より、よっぽど現実的でありがたみのある賞品である。目標をこれに絞る。

 ちょい下を見れば、アタック賞の洗剤、夏もあった缶ビール1ダース、そして一番下にはまた現金10円とある。‥赤玉は危険か、よし。そしていよいよハンドルに手をかける。前回の気合い不足を反省し、今回はグルグル勢いよく回す。
 ガラガラガラ‥‥出ない。「もうちょっとゆっくりお願いします」‥そうか。折角の気合いを削がれ、出たのは赤玉。慣れた手つきで係員が10円玉を取り出す。


 今度は気合いを入れつつも少し速度を緩め、まさに絶妙なバランスにて玉が勢いよく出てくる。むっ!黄玉かっ!1万円はゴールドだったから、せめてビールくらいは行くか?ふっ、ついに我が気合いが勝る日が来たか、それでこそ‥
 おい。なぜ赤玉と同様の手つきでコインを取る。抗議してくれよう、と身を乗り出し余の賞品皿を見ると‥ちょっと色の違う、一回り大きい硬貨が。数字には100とある。

 まあ10円の10倍では無いか、次は100円の100倍だな。気を取り直して回すが、確かにパワーは落ちていた。玉は悲しげにコトッと静かに落ちた。その色は‥‥

やはり赤だったのである。ヒュルルルルルルルル



本日の教訓:福引きこそ生涯のライバルである

(95/ 1/ 4)


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