人生を変えたゲームたち

その10 Travian(Web)

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 キリよく10個で終わりとしよう。最後はついこないだの話。

 発端は2008年11月。仕事中に同僚と雑談で、最近面白いゲームねえなあとかぼやいてたときだった。そいつはあまりヘビーなゲーマーではないはずだったが、こんなの見つけたけどやってみたら、とURLを教えてもらったのがTravian(Web)だった。

 いかにも洋ゲーらしい不自然な翻訳と色使い。不自然すぎてそもそも何をやるゲームなのか理解できていなかったが、紹介された以上はせめてプレイして感想を述べるのが礼儀というものである。

 だいたい麦と木とレンガと石を集めて街づくりとか、どうせどっかのカタン(ボード)の影響を受けたベタなドイツゲーだろ、はいワロスワロスとか思いつつも、レンガを見ると積まずにはいられない習性がもはや身についてしまった体には逆らえなかった。

 やってみると、時間軸はゆっくりしているものの、Age of Empire(Win)などのRTS(リアルタイム戦略ゲーム)そのものであった。資源ひとつ増えるのに数分かかって、倉庫が一杯になるまで数時間。一手打つと、その指令が終わるまで数分から数時間。基本無料だが、課金ポイントを使うとコマンドが瞬時に完了したり、資源生産量が増えたりとか色々便利。まあ今では村ゲーなどといちジャンルとなったが、ブラウザ三国志(Web)とかの原型になったのがこれ。時間軸が長いので、本当にゲーム終了条件を満たすまでは数ヶ月から1年ぐらいかかる。

 そんなのんびりしたゲームなので、張り付いてたってやることはない。アラームでも仕掛けておいて、たまに覗きにくればいい放置ゲーム。そう思ってた時期が私にもありました。


 最初は確かにそうなのだが、やがて最初の村が成長をとげて、次の村を作れるようになると、忙しさは倍になる。と言っても数時間に1回が数時間に2回になる程度。だが、3村目、4村目となるとどうか。最終的には30村ぐらい管理することになった。しかもそれは基礎的な農耕だけの話であり、それと別に兵を作って差し向けて戦争するゲームなので、結局べったり張り付きが必要となる。

 始めて20日ぐらいは、そんな惨状が待っているとは気づかず、のんびりとシムシティしていたところ、平日日中に敵の攻撃の洗礼を受けていたことに、帰宅してからログで知る。資源を盗まれ、しかもそれに味を占めてその後も再び攻めてきている。農耕ゲームだと思ったら戦争ゲームだったのかと愕然とし、かといって平伏するわけにもいかないので、その気ならこっちも相応の報復をするぞと強気なメッセージを送る。内実は兵士どころか兵舎すら作ってない、純度の高い羊プレイヤーなのだが。ウール100%。

 警告にも関わらず敵はまだ攻めてくる。オンライン中は隠し倉庫に資源を隠して略奪されないようにするが、平日日中はいかんともしがたい。敵を捕獲する罠を作ってみるが、少しぐらい敵を捕らえたところで、奪還にくる敵兵を撃退できる戦力がいなければ、奪還を誘うだけ悪手であることに気づく。


 ゲーム内の展開を書き出すとキリがないのだが、かいつまんで。

・守ってくれる同盟の傘を探すが、最初入った泡沫同盟が盟主が日替わりで抜けていくありさまで、かつ弱小のくせにあちこちケンカ売ってて役に立つどころか災厄を招く
・しまいにスウェーデン人が盟主になって、ああ、こういうゲームなんだな、と
・その感覚で敵に「日本語が通じるのか」と素直にIGMしたら、いたくお怒りになりまして
・しかしそこは日本人、会話が通じればなんとかなるもので、あまりにひどい同盟のありさまに、まともな同盟に入るまで攻めないでおいてやると温情かけられる
・そこから同盟探し 近場の同盟に申請出したら1週間経ってもIGMが未読で、ああ、こういうゲームなんだな、と
・その一週間の間に少し大きめの同盟から招待状が入ってて、承諾したら「満員です」ってハネられて、ああ、こういうゲームなんだな、と
・やっとまともな同盟を見つけて加入、しばらくのうのうと農耕する

・中盤になり、南西地方の覇権争いが始まる
・まともな同盟だと思ったが、図体がでかいだけで盟主のワンマン経営
・その盟主が不在がちになってきて、嫌気が差した主力プレイヤーたちが別同盟に移籍しだす
・国力が弱まった同盟は、南西最大勢力と戦うまでもなく併合される

・南西統一戦のさなか、連合の中でも働きの悪い我が同盟の幹部が、IRCで詰問を受ける
・テンパった幹部が、同盟全体の話を個人の話にすり替え、挙句兵がいないのは同士討ちで戦力を失ったせいだとか同盟の恥部を惜しげもなく開示しだす
・しかも何か問題がおありですかな、とか味方ですらイラっとくる言葉遣い
・当然ながらフルボッコに遭い、連合から追放するかと極論も出だすありさま
・いやたまたまIRC見てたけど、今日田舎のオカンが来てるんですよね、誰か早く突っ込んでくれないかな
・誰も何も発言しないので、仕方ないので手短に、こいつ実は幹部じゃないんです自称なんですウソなんですと田舎芝居をうつ
・その瞬間から、連合各社から引き抜きトークの嵐
・結局オカンは孫と遊ばせておいて、その日は結局5時間たっぷりとIRCで釈明と勧誘対応

・現同盟に見切りをつけて、南西連合最大の同盟に移籍する
・南西統一の次は、別方角との戦い まずは近い北西との一大決戦が始まる

・この辺から、村数が多くなって平日日中放置できなくなり、昼休みに図書館まで歩いてPCを借りてプレイするように
・会社のPCでやったら足つくし、まだ当時は通信カードとか配布されてなかったし、ましてやスマホとかない頃だし
・図書館までは片道20分 昼飯はパン買って歩きながら食うとしても、プレイに1時間近くかかるし、昼休みが2時間かかる人として職場でも有名になっていく
・もちろん毎日やらないと、食料が不足して兵が餓死するから略奪指示出さないといかんし、敵は攻めてくるし、移籍後は幹部も任されたんで仕事あるし

・そんなこんなで夏休みに帰省しても放置できないので、実家のヘボPCでもブラウザぐらいは立ち上がるのでひたすら村の面倒を見る日々。
・仕事で入社以来最大級のトラブルがあり、終電で帰って始発で出社、というような状況でもTravianだけはやっていく。

・最初は弱小プレイヤーだったはずが、丹精こめて村育ててるうちに同盟の主力部隊に成長
・数万人のプレイヤーがひしめくサーバの中で、上位3桁に入るってすごいことなのよ
・北西とは和睦し、西側連合vs東側連合の構図に
・1年以上にわたるプレイの結果、僅差で東側連合に敗北を喫する

・一方会社は秋の人事異動が発表。毎日ランチ2時間が響いたか、子会社出向を命じられる


 ああ人生変わったね。ちなみにかなり懲りたはずのこのゲーム、4年後にまた丸1年かけてプレイすることになる。


<人生の変化ポイント>
・「継続は力なり」を身を持って知る
・あとものごとには限度ってものがあることも身を持って知る
・結局わしの人生ってゲーム優先じゃな


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(2015年07月27日)

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