人生を変えたゲームたち

その4 タンクハンター(カード)

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 高校に入ってしばらくして、中学時代の友人から誘われた縁で、テーブルトークのサークルに入ることになった。そいつは全然ゲームとか縁がなさそうな顔してた割に、どうしてそんなものに参加することになったのか、しかもなぜいきなり勧誘されたのか、その辺の経緯は今に至るまでさっぱり分かってない。そのサークルは新規参加歓迎というわけでもなく、私を最後にメンバーの追加は一切なかったのだが。

 さて肝心のテーブルトークの方は、私はいまいちいいプレイヤーではなかったようで、GMの目の前で大あくびを頻繁にしているのを見咎められて睨まれたり、Wizardry(PC88)感覚でもっとガンガン戦闘しようぜーと無用な戦闘を好んだり。

 まあなにより初プレイ時に盗賊を選んで、「穴があります。どうしますか?」と問われて、そら盗賊だしとりあえず覗くんじゃね?と言った途端、「矢が出てきてあなたは死にました」で本気でゲームオーバーにされたのがトラウマに。そのときは周囲が取り成してくれて、せめて回避ロールぐらいさせろよと粘ってくれてなんとかゲームは続行できたが、以後テーブルトークにはあまり思い入れが持てない。


 それより、シナリオの都合で時間がちょい余ったときにやるカードゲームが私にとっては本番だった。それまでカードゲームと言えば家族でトランプ程度しかやらなかったもんだから、モンスターズメーカー(カード)とか出されるとそれはそれは楽しかった。そんな中、家主の奴が出してきたのがタンクハンターだった。

 みんなは既にプレイ済みだったのか、ろくなルール説明も受けさせてもらえず、いきなり戦車カードを配られてドンパチ。爆撃機カードを出されて、1D6の数だけ戦車を失うって全部やんけ、みたいな展開ばかりでぼろ負けもいいところだったが、これは強烈だった。

 数日後にはハンズに寄ってすかさず同じものをゲット。驚いたことにカードゲームのくせにカットされてなくて、台紙から抜き取るタイプだった。爆撃機カードにガンついちゃまずいだろ、と思いつつも丁寧に切り離したことをよく覚えてる。

 既に持ってる面子の前で同じものを出してもしょうがないし、むしろ俺も何も知らない奴を爆撃したいという邪な思いを胸に、学校に持っていくことにする。高校1年のときはトランプを持っていっただけで没収される目に遭って警戒していたが、2年の担任は幸いにしてそういうものに対して非常に大らかな先生だったため、心置きなく遊ぶことができた。あの先生には未だに深く感謝している。

 クラス替えとなると、序盤でいかに交友関係を築くかでそのクラスでの居心地がだいぶ変わるものだが、タンクハンターはその交友関係作りに大いに貢献した。まずはコブラっち(仮名)を皮切りに、体育会系以外のインドアな連中を次々と巻き込み、一大タンクハンター派閥を形成するに至ったのである。当然ながら持ち主である私がその派閥の長のようなものになり、一歩間えばいじめられっ子になりかねない高校生活を、平穏無事に、というか面白おかしく過ごさせてくれたのは紛れも無くタンクハンターのおかげである。

 ついでに、他人の人生も(多分)救ったことすらある。メンバーの中に、どうやら精神的な疾患に陥った奴がひとりいて、そいつはいつしか学校に来れなくなった。当時はそういうデリケートなことに対する対応がさっぱり分からなかったのだが、連絡網の順番が隣だったので、そいつから電話を受けたときに、「明日は来るんだろ?またタンクハンターやろうぜ」と誘ったところ、数ヶ月の不登校からぼちぼちと復帰し出したのである。ひょっとするとたまたまタイミングが一致しただけで別の要因があったのかもしれないが、少なくとも何割かはタンクハンターが救ったものだと信じている。

 なおプレイヤーが新規参入してくる度に、ルールをインストしてやるのも当然持ち主の役目。今に至るまで延々と続くインスト係の素地は、このときから育まれていたのである。


 そしてこのゲームにはもうひとつ後日談がある。初プレイから5年ぐらい経過して、大学時代のこと。下宿の友人の部屋に遊びにいったところ、既に来ていた1年上の先輩がスーパーファミコン(だったと思う)で空戦ゲームを遊んでいた。

そのとき、イギリスの戦闘機についてた国籍マーク(同心円、外から青白赤)

を見て、タンクハンターにあったフランス戦車の国籍マークと勘違いした私は、それフランスですよねと口を挟んだ。

 先輩は何を言ってるんだ君は、イギリス以外にありえんだろうと一歩も譲らず、よろしいならば私の部屋に来てタンクハンターの実物を見ていただこうではないかということに。その先輩はやがてそれが縁で、私の部屋に入り浸るようになった。先輩の名はぽちょむきんすたー(仮名)と言う。

フランスの国籍マーク?どうでもよかろうそんなもの。



<人生の変化ポイント>
・平和な高校生活
・インストの素地
・ぽちょむきんすたー(仮名)との出会い

(2015年06月29日)

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