人生を変えたゲームたち　その8

人生を変えたゲームたち

その8　貴族の務め（ボード）

　大学の下宿で夜になるとパソコン通信に励んでいたが、当時のパソコン通信には、電話代という大きな関門があった。PC-VANの利用料金とは別に、アクセスポイントまでの電話代を払う必要がある。当時は市内料金3分10円。1時間で200円。毎晩数時間やってたら、月にすると数万円単位に至る。貧乏学生には非常に痛い出費である。

　当然ながら接続しっぱなしなんて贅沢は敵なので、必要なときだけ接続して、ログをがーっと一気にマクロでダウンロードして、オフラインにしてからじっくりと読む。そして接続する時間も、深夜の電話代が安くなる時間に限定する。のちにテレホーダイという、23時以降の深夜だけは掛け放題なプランが出るが、確かまだプランが出る前だったし、第一に下宿の電話回線なのでプラン変更自体する権利がなかった。そういや20部屋で2回線しかない下宿だったので、たまに繋ごうとして回線が埋まってると全部屋回って寮長権限でさっさと切れと脅したのはいい思い出である。

　さてそうなると深夜までの夜間は、意外と暇になる。時折下宿の仲間たちとマージャン打ったりもしてたが、あまりうまくないのでそれほどハマらなかった。それより大流行したのはストリートファイター2（SFC）対戦である。なぜか当時対戦会場には私の部屋が選定され、あまつさえスーパーファミコン本体は持ち主が持ち帰らずに、私の部屋に置きっぱなしにされた。常設会場扱いである。

　いつの間にかぽちょむきんすたー（仮名）先輩も、もはや当然のような顔をしてスト2対戦に加わるようになり、やがてトルネコの冒険（SFC）を持参してきて置かれたスーファミ本体で遊ぶように。ひどいときなんか、人がまだ寝てるところにこっそり忍び込んできて、人のリプレイを見て死に様をゲラゲラ笑うぽちょむきんすたー（仮名）の声で目覚める、とか。

　あとは先輩がスーファミやってる傍らでCivilization（Win）をやっていると、興味津々に覗きこんできて、なんか面白そうだな、対戦できないのかそれ、と無茶をおっしゃる。前回書いた通り、当時のPCゲームに対戦機能なんかろくについてなく、そしてCivilizationにはホットシート機能もなかった。

　ところがそれでは諦めないぽちょむきんすたー（仮名）先輩、あるとき初期開拓者が2体出るのを見て、「それひとつ寄越せよ」と横暴にも持っていかれる。変形ホットシートである。味方同士なのだが、自分が育てた街は自分のもの、という足の引っ張り合いプレイ。首都はさすがに私がもらったが、2つ目の都市を作った先輩は、
「首都から道引けよ」
「ちょっと蛮族きたぞ、都市守るために首都の防衛兵よこせよ」
とか、もう横暴の極み。挙句の果てにそれでがら空きになった首都が敵にあっさり占領されるとゲラ笑い。いやどう見ても先輩のせいですがな。この足の引っ張り合いの関係は、今に至るまで失われていない。正直先輩とのタッグは勝てる気がしない。

　さてそんな感じでもはや下宿の一員と化しているぽちょむきんすたー（仮名）先輩、あるときおもむろになにか大きい箱を持ってきて、下宿のメンバー集めてこれで遊ぼうぜとこうおっしゃる。貴族の務め（ボード）というタイトルを知るのはだいぶ後のことで、
「なんですかこれは？」
「ん、まあ見せびらかすゲームだな」
というやりとりのため、数年間はこれを見せびらかすゲーム（ボード）というタイトルだと思ってた。

　これがなかなか面白く、下宿のメンバーもプレイヤーレベルが割と高めだったこともあり、以後ぽちょむきんすたー（仮名）先輩は次々とボードゲームを持ってくるようになった。特にこの次に遊んだアクワイア（ボード）は、今も私のお気に入りのひとつであり、自分で別途買い求めるに至ったのである。

　ちなみにプレイ自体は強かったかどうかは記憶に残っていないが、読み合いのゲームで、ぽちょむきんすたー（仮名）の思考回路が手に取るように分かったことだけは覚えてる。そもそも、タンクハンター（カード）の件で出会ってから、会話していて思考ルーチンがことごとく同一であることが仲良くなったきっかけなのである。なんだこの生き別れの兄さんは、というレベルで。

　まあその後、こっちは二児の父になったなど大きく人生が分かれたため、当時ほど思考ルーチンは一致しなくなくなったが、それでもバッティングゲームやると大体ろくなことはないし、まじめに考えれば奴がどんな手を打つのかは大体想像がつく。そういやジョジョオタなのも大きな共通点だった。

　なお先輩だったはずの人は、どこかで留年してなぜか一緒の卒業式に出る。この時点でもはや先輩ではないので、以後ぽちょむきんすたー（仮名）と呼び捨てにさせていただこう。あれから20年以上経つ。

＜人生の変化ポイント＞
・ドイツゲームとの出会い
・俺たちほどよく計算された関係はあるまいッ！

（2015年07月12日）

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